こんにちわ。ぴぴねこです。
さて、2021年10月26日に今村翔吾さんの「塞王の楯」が発売になりました。
発行元の集英社では、なんと冒頭の16ページを試し読みできるTAKE FREEの小冊子を配布して、作品の内容を紹介していました。
究極のエンターテイメント戦国小説である「塞王の楯」とは、どんな話なのか…。購入する前にちょっとだけのぞいてみましょう。
はじめに
今村翔吾さんの「塞翁の楯」を一言で紹介するなら、安土桃山時代末期を舞台に、城の石垣などを作る「穴太衆(あのうしゅう)」と鉄砲職人の「国友衆(くにともしゅう)」の戦いを描いた戦国小説といえるでしょう。
え…なんか地味だなって…まぁ、そうかもしれませんが…いやいや、これからです。これから、この小説の面白さを紹介していきますよ~。
塞王(さいおう)ってだれなの?
塞王というのは、穴太衆・飛田屋の頭目のことです。頭目ということは、その集団の中で一番偉い人ってことで、鉄壁の石垣を積み上げることから「塞王」の名前がついたようです。
この方が主人公ではなく、戦争で父母と妹を喪った匡介(きょうすけ)を塞王が保護するところから物語は始まります。
穴太衆(あのうしゅう)って?
穴太衆とは、近江国(滋賀県)穴太(あのお)に住んでいた石工集団の事です。石工(いしく)というのは石の職人のことで、石材を加工して暮らしていたそうですが、戦国時代には築城のときに石垣をつくりますから、その時に活躍したのが穴太衆だそうです。その石垣が高く堅固なため当時大人気だったらしく、石垣といえば穴太衆という感じだったようです。
現在でも子孫の方々が活躍されていて、地震で壊れてしまった熊本城の石垣の再建に携わっておられるそうです。すごいですよね~。
国友衆(くにともしゅう)って?
それに対する国友衆というのは、こちらも近江国の坂田郡(現在の長浜市あたり)に住んでいた、鉄砲職人のことで、戦国時代に良質な鉄砲を生産したことで知られおり、国友の銃は人気だったそうで、国内随一の生産量を誇ったとか…。
ということは…?
なんとなくおわかりでしょう。「どんな攻めも、撥ね返す石垣 VS どんな守りも、打ち破る鉄砲。」の対決なんです。まさに、最強の楯と最強の矛の戦いというやつです。
もちろん、戦国エンターテインメント小説ですから、どちらかが勝ってということになるんですが、このお話のテーマはそれだけにとどまらず、「人が争うのは何故か、争いを始めるのは誰か、それを受け止める術は本当にないのか。」という今村さんの問いかけがあります。
攻めてくる鉄砲隊、戦いのさなか石垣を修復するために戦場を駆け回る穴太衆。もちろん、戦国エンターテイメントですからダイナミックな戦闘シーンもあります。
もう…うずうずしちゃいますよね。さて、そんな歴史時代小説を書いている今村翔吾さんとは、どのような方なのでしょうか…。
今村翔吾さんってどんな人なの?
経歴など
今村翔吾さんは、1984年生まれ。2017年に「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」でデビューし、2018年「童神」で第10回角川春樹小説賞を受賞。2019年に「八本目の槍」で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。2020年「じんかん」で第11回山田風太郎賞を受賞、2021年に「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞を受賞と、大活躍をなさっています。
お書きになるのは、歴史時代小説が多いと思います。ワタクシも、story・boxという小学館の小冊子で「海鬼の国(かいらぎのくに)」を読んでいますが、面白いんですよね~。新たな歴史時代小説の作家さんとして、これからの活躍が非常に期待されている方なのです。
ただ…今村さんは、歴史小説・時代小説の作家さん。でも今回の「塞王の楯」は戦国エンターテイメント小説。なんか、ジャンルがあるみたいですがどこがどう違うの?
歴史小説と時代小説の違いとは
小説には、歴史小説と時代小説という明確なジャンル分けがありました。最近は、戦国小説というジャンルもあるようですが、明確になっておらずこれからという感じだと思います。
どこがちがうの?
歴史小説は歴史上に実在した人物や事件が主となり、歴史上定説とされる事実に即したストーリーになるものです。ただ、歴史の定説って変わったりするので、ある程度のフィクションも許されると思います。
それに対して時代小説というのは、架空の人物を登場させるか、歴史上の人物でも全く違う活躍をさせたりするのが特徴のようです。じゃ、どの辺の歴史までが範囲なの?というのも割と曖昧かもしれませんね〜。さらに戦国時代を背景とした戦国小説というジャンルもでてきているので、かなりややこしいことになっています。
とはいえ、私たち読者には、そんな区別はあまり重要じゃなくて、いかに面白いのか…いかに心を打たれるか…という事ですよね。歴史小説の代表といえば、司馬遼太郎さんでしょうし、時代小説といえば、池波正太郎さんかなぁっと思います。どちらも面白いし、もうどっちだっていいよね〜っという感じです。そんな事からなのか、色々区別するのが面倒なのか、最近は歴史時代小説というジャンルに統合されているのかもしれません。
これからはどうなるの?
戦国小説は、戦国時代をテーマにしたものなので変わらないと思いますが、歴史小説・時代小説は、これから変わってくるでしょう。それは、明治以降の近代を取り扱うこともできるからです。少しずつですが第二次世界大戦を扱っている歴史小説・時代小説も増えてきました。戦争文学なんて言葉も聞いたことがあります。
そして、文学的なものだけじゃなくエンターテイメント性を持たせつつ、戦争について考えさせてくれるような作品が出てくることを期待しています。戦争は小説の中だけで十分ですよね。
小説を楽しもう
というわけで、冒頭の16ぺージを読んでみましたが…いや、これからどうなるのか気になるところです。とはいえ、ここに記載することもできませんので、あらすじを紹介しましょう。
あらすじ
「越前・一乗谷城は織田信長によって落とされた。幼き匡介(きょうすけ)は父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎(げんさい)に助けられる。匡介は源斎を頭目とする穴太衆の飛田屋で育てられる。匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を造れば戦いを無くせると考え、石積の技を磨き続ける。
秀吉が死に、戦乱の気配が近づく中、匡介は大津城の石垣造りを任される。一方、そこを攻めようとしている石田三成は「至高の矛」と称される鉄砲作りの集団・国友衆に以来した…。究極の武器を作ることこそ戦いの抑止力になると信じる国友衆の彦九郎。
大軍に囲まれた絶体絶命の大津城を舞台に、宿命の対決がいま幕を開ける!」
もう、このあらすじを読んだだけでうるっと来ちゃいますよね。どちらも戦いを無くすために、自分の技術を磨き続けるんですから…。現代の問題にも密接に関わってきていますよね。それこそが、歴史・時代小説の醍醐味ですし、今村さんの問いかけがにじみ出ています。
まとめ
さあ、10月26日火曜日に発売になった、今村翔吾さんの「塞王の楯」。560ページで読み応え抜群です。文庫になるまでなんて待てなそう。定価2200円ですが…これは買いじゃないでしょうか。
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